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ロシア便り

Здравствуите, MALDのHです。現在、このブログ記事を大西洋上空を飛行中の機内で書いています。


今月14日から今日まで、フレッチャースクールのロシア・ユーラシアプログラムが主催するロシアトリップに参加する形で、サンクトペテルブルクとモスクワを訪問してきました。春休みの10日間を利用したこのトリップには、フレッチャースクールからは、ロシアが専門で私の修士論文の指導教授であるミラー教授、国際政治が専門のドレズナー教授、国際法が専門のチェイス教授を含む教授数名、そして学生14名が参加。モスクワの外交官養成校である国際関係大学(MGIMO)における米露両国の実務家・専門家による会議、MGIMOの学生・フレッチャー生合同のポリシーワークショップを中心としつつ、ロシア外務省や在ロシア米大使館への訪問、更には両都市における文化体験等も含む大変充実した日程でした。私自身は、これらの公式日程に加え、日露の経済関係を修士論文のテーマとしていることから、個別にアポイントメントを取り、ロシア科学アカデミー経済研究所や、在モスクワの日本の政府関係機関にも足を運び、日露両国の実務家・専門家の方々ともお会いしました。


トリップの目玉であるMGIMOでは、以前、当ブログの記事(手持ちのレンズを増やすということ)でもご紹介した、米露関係に関する遠隔での合同授業にて画面越しに議論を戦わせた学生達と初めて対面し、今度は画面越しではなく直接顔を付き合わせて、「新核時代」における戦略的安定性、気候変動問題における米露両国の協力について、1週間、みっち

モスクワ・赤の広場にて


りと議論を重ねました。


先学期の遠隔授業の際に、ロシア側との間の考え方、見方の相違がそれなりに顕在化していたこともあり、MGIMOの学生を含むロシア側との議論に際し、当初、米国側には少し構えた雰囲気がありました(無論ロシア側にも)。かく言う私にとっても、限られた時間で、どこまで議論が深まるのか、全くの未知数でした。実際に、議論は必ずしもスムーズに進んだ訳ではなく、INF(中距離核戦力全廃条約)、NATO拡大、対露制裁等を中心に、実務家・専門家同士でも、学生同士でも、議論がヒートアップする場面もありました。米ソ冷戦が終結して30年が経った今もなお、米露両国の間には、日本人である自分には理解できない、どうしようもない対立の種が残っているのでないだろうか、ついそう感じざるを得ない場面もありました。そういう意味では、米国の学校に在籍し、米国側として参加しつつも日本人である私の立ち位置は良くも悪くも微妙だったかも知れません。


しかし、毎日顔を合わせ、一緒にカフェテリアで食事を摂り、互いを知っていくうちに、米露両国に共通の利益を探そう、そして最初は小さな一歩であっても着実に成功体験を積み重ねていこうという建設的な方向に、段々と議論が進んでいきました。1週間の議論の末に最終的に学生達で作り上げた政策提言の内容は、したがって、両国の利益の最大公約数的なところに落ち着いたため、ものすごく深いものであったとは必ずしも言えないかも知れませんが、それでも、相互の信頼を積み重ね、出来るところからやっていこうという理念を共有することができたことは大きな収穫でした。


少し脱線しますが、基本的に社会人経験を前提としているフレッチャースクールと異なり、MGIMOは学部から直接進学してきた学生が主なので、御年30歳のオッサンから見ると、20代前半の彼らの若さが本当に眩しかったです。終日、みっちり議論したり、会議に出席したりでくたくたな我々に対して、一日の終わりに、全く遠慮することなく街に繰り出そうと誘ってくるのは有難いと言うか何と言うか。夕食の席では、お酒が入ってくると、みんなで声を揃えて手を叩きながらカチューシャ等のロシア民謡を歌い始める姿が、可愛くもあり、羨ましくもありました。


無事に政策提言を作り上げ、昨夜はMGIMOの学生達とモスクワに近年増えてきたというお洒落なお店で打ち上げでした。私の真向かいに座っていたMGIMO側の学生カップルと暫し語り合いました。「僕たちの間には考え方、見方の相違がある。そして国には、それぞれの利益がある。だけど、相手の考え方、見方を知ることも出来る。そして、共通の利益を見出し広げていくこともできる。」大事なことは先入観を排すること、対話を絶やさないことであるという点で意気投合しました。


今回のトリップは上述のとおり米露関係がメインテーマであり、直接的に日露関係には触れるものではありませんでした。残念ながら日露関係を米露関係の従属変数と見る向きもあり、確かにそうした側面もあるでしょう。いずれにせよ日露関係は依然として予断を許さない状況が続いており、今後どのような道筋をたどるのか確信を持って予想できる人は、ほぼいないのが実情ではないかと思います。しかし、いや、だからこそ、これからの日露両国の広い意味での外交を担う世代同士が継続的かつ分厚い交流を保っていくことは極めて重要であると私は考えています。人的交流だけで全てが解決するほど甘い世界ではないとは思いますが、人と人との繋がりなくして問題解決の糸口は見えてこないのもまた事実です。


今回の訪問では、プーチン政権と近い立場の方々、政権から距離を保っている方々、様々な方々にお会いしました。とかく一枚岩に見えがちなロシアの政策界隈の多様性を垣間見ることができたことも収穫でした。そして、実に多くの人々が日本に対して関心を抱いていることも実感できました。


この出会いの芽を大きな木に育てていきたい。いよいよフレッチャースクールからの卒業、日本への帰国まで2ヶ月を切りましたが、是非とも、帰国後はロシアとの関係に携わることのできる仕事に携わっていきたい、ライフワークの一つにしていきたいと考えています。なお、往年の日本人外交官の方々の話を聞くと、ロシア人外交官と仲良くなるためにはウォッカを浴びるように飲まなければいけないということで、下戸な私は正直かなり心配していたのですが、MGIMOの学生達によると、それは上の世代の方々の話であって、若い世代は必ずしもウォッカを深い付き合いの前提としていないということで、一安心しました。このトリップに備えて細々と勉強を始めたロシア語も上達させていきたいと思います。


と言うことで、そろそろ飛行機が北米大陸に差し掛かるところですが、今回の訪問の成果を修士論文に反映せねば・・・いや、それよりも先に、日本に一時帰国していた妻と子供がまもなくボストンに戻ってくるので、男の一人暮らしで荒れ果てた我が家を掃除せなばと思うと頭が痛いです。とにかく色々と頑張ります。


P.S.

これまでご愛読いただいてきた(?)当ブログも、まもなく我々2年生が卒業ということで、現1年生の方々に、次回投稿よりバトンタッチ致します。これまでお付き合いいただきましたことに心から感謝申し上げますとともに、引き続きご愛読いただきますよう、よろしくお願い致します。

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